Web制作を外注したのに、納品後に自分たちで更新できない会社へ
「サイトはあるんですが、触れないんです」
こういう相談を、これまで何度も受けてきました。お金を払って作ってもらったのに、納品後、自分たちでは何も変えられない。毎月の保守費だけが引き落とされていく。誰に何を聞けばいいのかも分からない。
この状態は、その会社のITリテラシーの問題ではありません。引き継ぎの仕組みが最初から用意されていなかっただけです。そして、ほぼ必ず立て直せると思っています。
触れないサイトは、だいたい3パターン
相談の持ち込まれ方は、だいたい次の3つに分かれます。
① 前の業者と音信不通。 一番多くて、一番厄介です。作った人と連絡がつかない。サーバーがどこにあるのかも、ログイン情報も分からない。サイトは表示されているのに、誰も中に入れない状態です。
② 保守業者がすべての情報を握っている。 サーバーもドメインもCMSのログインも、全部が保守会社の管理下。何か変えたいときは都度依頼で、費用と時間がかかる。契約上は正常でも、実質的に自社のサイトを自社でコントロールできていません。
③ 更新の仕方が分からなくなった。 WordPressなどで作ってもらったのに、担当者が変わった、時間が経った、などで更新方法を忘れてしまった。管理画面はあるのに、誰も入り方を覚えていない。これも本当に多いです。
②には、もう一つ厄介な形があります。相手が知人や紹介先だった場合です。SNSで相互フォローしているような関係だと、情報を出してくださいと言い出しにくい。関係が近いからこそ動けなくなる、というケースは実際にあります。
まず、今日確認してほしいこと
どのパターンでも、最初にやることは同じです。自社が何を持っているかの棚卸しです。分かる範囲でリストにしてみてください。
- ドメイン:どこで契約しているか。名義は自社か、業者か
- サーバー:どこの会社か。契約者は誰か。ログインできるか
- CMS(WordPressなど)の管理画面:URLとログイン情報はあるか
- その他:Googleアナリティクス、サーチコンソールなどの権限
引き継ぎ相談で私が最初に確認するのも、この2点です。ログイン情報を持っているか。そして、どこをどう変えたいか。これが揃っていれば、引き継ぎはそれほど難しくありません。
なかでも最優先はドメインの名義です。サーバーもサイトも作り直せますが、ドメイン(〇〇.co.jpのような、Web上の住所)を失うと、積み上げてきた検索評価も、名刺や印刷物に刷ったURLも、まとめて失います。ここだけは今日確認してください。
パターン別・抜け出し方
業者と音信不通の場合
まず、棚卸しで手元にあるものを確定させます。ドメインだけでも自社名義なら、かなり戦えます。
サイトのデータがどうしても取り出せないときは、公開されているサイトをもとに作り直す、という手があります。私も実際に、その形で再構築しました。表示されている画面は見えているので、それを見本にして新しい環境で組み直すやり方です。
ただし一点、デザインやコードの著作権が契約上どうなっているかは確認しておくべきです。契約書が見つからない、そもそも無い、というケースも多いのですが、その場合は、これを機に内容を見直しながら作り直すほうが、権利の面でも実利の面でもいい結果になります。
保守業者に握られている場合
喧嘩ではなく、移管の手続きとして進めるのがコツだと思います。感情的に「解約します」から入ると、情報が出てこなくなって詰みます。
やることは地道です。ドメイン・サーバー・各種ログインを一つずつ確認してもらい、自社の持ち物へ移していく。私が入るときも、この確認して移す作業の伴走から始めます。全部移し終えて初めて、保守を続けるか別の体制にするかを自由に選べるようになります。
相手が知人で言い出しにくい場合は、「社内の管理ルールで、契約類を自社名義に揃えることになった」という形にすると角が立ちません。これは方便でもなんでもなく、本来あるべき状態に戻すだけの話です。
更新方法が分からなくなった場合
3つのなかでは一番軽症です。管理画面に入れさえすれば、操作は思い出せます。
私が納品するときは、更新手順をその会社の実際の画面でまとめた資料を渡すようにしています。このページを直すにはここを開いてここを変える、という具体的な形にしておく。更新が止まる原因は、操作の難しさより、自分のサイトのどこに何があるか分からないことのほうが大きいからです。そこさえ埋まれば、また回り始めます。
これから外注する会社へ:3つだけ確認してください
同じ状態を繰り返さないために、次に頼むときは契約前にこれを聞いてください。
- ドメインとサーバーは自社名義になりますか
- 各種ログイン情報は納品時にすべてもらえますか
- 更新手順の説明(または資料)はありますか
まともな制作者なら、3つとも即答で「はい」と答えると思います。ここで言葉を濁す相手だと、悪意の有無にかかわらず、あとで今回のような状態になりやすいと感じています。価格やデザインの前に、ここを見てほしいと思います。
まとめ
触れないサイトは、音信不通・情報を握られている・更新方法が分からない、のどれかであることが多いです。最初にやるのは自社の棚卸しで、とくにドメインの名義は最優先で確認してください。抜け出す道は必ずあります。作り直し、移管、手順の再整備と、状態に応じて打てる手は違います。そして次に外注するときは、名義・ログイン情報・更新手順の3点を契約前に確認する。
サイトは、公開してからのほうが長く付き合う資産です。その資産は、自社の名義で、自社の手の届くところに置いておいてください。
納品して終わりではありません。サイト公開後も相談できる制作者をお探しの方は、まずはお話をお聞かせください。