案件単価を上げるために、やめたことが2つある
単価の話は、同業同士でもあまり表で語られません。でも、発注する側にとっても、価格の裏で制作者が何を考えているかは判断材料になると思うので、正直に書きます。
私の最初の案件は、5ページで4万円でした。今は1件でおおむね50万円から100万円くらいの規模を請けています。
ただ、単価が上がった理由はスキルだけではありません。振り返ると、何かを足したというより、2つのことをやめたのが大きかった。
やめたこと①:安い案件を受けること
安く早く受けていた頃は、とにかく数でした。ただ、安い案件ほどクレームや無理な要求が多い。要件が固まらないまま走り出して、実装が終わってから作り直しになる。追加費用の話になって気まずくなる。そういうことが本当に多かったです。
お客さんが悪かったわけではありません。構造の問題だったと思っています。
価格だけで制作者を選ぶ関係だと、誰に頼むかがそれほど重要ではなくなる。お互いに相手をよく知らないまま始まるので、認識も合わない。要するに、価格を下げることで、自分に合わない仕事のほうを自分から引き寄せていたわけです。
だから、安い金額で受けること自体をやめました。今は自分の水準で見積もりを出して、それでも依頼が来たらありがたい、くらいの感覚でいます。その金額で頼んでくれる方は「iikenwebだから」と思って来てくれているので、結果的にいい関係になることが多いと感じています。
「高い」と言われたときも、値下げはほぼしません。代わりに、ページ数や要件のほうを調整して、金額に中身を合わせてもらいます。価格を下げるのではなく、価格に見合う形に設計し直す。このほうがお互いに納得感があると思います。
やめたこと②:言われたとおりに作ること
もう一つやめたのは、要望をひたすら聞くだけの姿勢です。
昔は、言われたことを言われたとおりに全部やっていました。一見それが誠実に思えます。でも、続けてみて気づきました。言いなりの関係は、意外と弱いと感じています。
言葉どおりには合っていても、お客さんが本当に達成したかったことからは、少しずつずれていきます。それに、言われたとおりにやる人は、別の言われたとおりにやる人と簡単に入れ替えられてしまうと思います。
今は、いただいた要望に対して、プロとしての提案、意図を汲んだ代替案、そしてやめたほうがいいと思うものは根拠を添えてそう伝えること。これらを織り交ぜています。もちろん、そのまま実装する場面もあります。ただ、「これをやりたい」という話が出たときほど、一歩引いて「それは何のためですか」と確認するのが習慣です。
反対したいわけではありません。ゴールをそろえたいだけです。
値上げしたら、離れていった人もいます
きれいな話だけ書くのはフェアではないので、こちらも書いておきます。
単価を1.5倍から2倍に上げたとき、それまで継続で依頼をくれていた方から、依頼が来なくなったことがあります。ひとりではありません。
私は、自分から人や案件を切ることはしません。合わないと思っても、こちらから関係を終わらせるのは違うと思っています。その代わり、値上げをする、スケジュールを長めに取る、といった形で条件を自分に寄せていく。結果として、条件が合わない方は自然に離れていきます。
これは、はっきり言えば選別です。冷たいやり方に見えるかもしれません。ただ、無理な条件で受け続けて、途中で品質を落としたり、投げ出したりするよりはましだと考えています。
やめた前後で、何が変わったか
残ったのは、信頼して任せてくれるお客さんでした。
要件定義・デザイン・実装での手戻りは、ほぼなくなりました。見積もりは一発で通ることが多くなり、スケジュールもこちらで組めるようになった。仕事のストレスが、ほとんどない状態になりました。
面白いのは、単価を上げたほうが揉めなくなったことです。高くなるほど要求はシビアになりそうなものですが、実際は逆でした。価格で選ぶ関係から「この人に頼みたい」で選ぶ関係に変わって、最初から認識を合わせやすいからだと思います。今はリピートしてくださる方が8割ほどです。
選ばれている理由を面と向かって聞いたことはありません。返信の早さ、曜日や時間にこだわらず動くこと、これをやっておくと助かるだろうなという先回り。続けているのはその程度で、特別なことはしていないつもりです。
まとめ
単価を上げるためにやめたのは、この2つです。
- 安い案件を受けること:価格を下げると、合わない仕事のほうが寄ってくる。値下げではなく、要件の調整で金額に中身を合わせる
- 言われたとおりに作ること:要望の裏の目的を確認し、提案や代替案を返す。その会話ができる関係のほうが長く続くと感じている
そして、値上げの代償として離れていった方もいます。全員に選ばれる価格は無いので、ここは引き受けるしかないと思っています。
発注する側の方に一つだけお伝えするなら、見積もりが高いと感じたとき、値切るより先に「この金額の根拠は何ですか」と聞いてみてください。そこできちんと説明できる相手なら、たぶん任せて大丈夫です。
納品して終わりではありません。サイト公開後も相談できる制作者をお探しの方は、まずはお話をお聞かせください。