案件単価を上げるために、やめたことが2つある
単価の話は、同業同士でもあまり表で語られません。でも、制作を発注する側にとっても「価格の裏で制作者が何を考えているか」は判断材料になると思うので、正直に書いてみます。
私は今、Web制作を昔よりだいぶ高い単価で請けています。最初の案件は数万円からのスタートだったので、それを思うと別人のような価格です。ただ、単価が上がった理由は「スキルが上がったから」だけではありません。振り返ると、何かを足したというより、2つのことをやめたのが大きかった。
やめたこと①:低単価の案件を受けること
身も蓋もないようですが、これが一番効きました。
安く・早く受けていた頃は、とにかく数をこなしていました。ただ、当時を思い返すと、安い案件ほどクレームや無理な要求が多かったんです。要件が固まらないまま走り出して、実装が終わってから作り直しになる。追加費用の話になって気まずくなる。そういうことが、本当に多かった。
これはお客さんが悪いという話ではなくて、構造の問題だったと思っています。価格だけで制作者を選ぶ関係だと、「誰に頼むか」がどうでもよくなる。お互いに相手をよく知らないまま始まるから、認識も合わない。価格を下げることで、自分に合わない仕事のほうを引き寄せていたわけです。
だから、低単価で受けること自体をやめました。今は自分の水準で見積もりを出して、それでも依頼が来たらありがたい、くらいの感覚でいます。実際、その金額でも頼んでくれる方は「iikenwebだから」と信頼して来てくれているので、結果的にいい関係になります。
ちなみに「高い」と言われたときも、値下げはほぼしません。その代わり、ページ数や要件のほうを調整して、金額に中身を合わせてもらいます。価格を崩すのではなく、価格に見合う形に設計し直す。このほうがお互い納得感があります。
やめたこと②:言いなりになること
もう一つやめたのは、要望をひたすら聞くだけの姿勢です。
昔は、言われたことを言われたとおりに全部やっていました。一見それが誠実に思えますが、続けてみて気づいたのは、言いなりの関係は意外と弱いということです。ご要望の言葉どおりには合っていても、お客さんが本当に達成したかったことからは、少しずつずれていく。そして「言われたとおりにやる人」は、別の「言われたとおりにやる人」と簡単に入れ替えられます。
今は、いただいた要望に対して、プロとしての提案、意図を汲んだ代替案、そしてダメだと思うものは根拠を添えて「やめたほうがいい」と伝えること。これらを織り交ぜて対応しています。もちろん、そのまま実装する場面もあります。ただ、お客さんから「これをやりたい」という話が出たときほど、一歩引いて「それは何のためですか」と確認するようにしています。
反対したいわけではなくて、ゴールをそろえたいだけです。そして経験上、こういう会話ができる相手だと思ってもらえたほうが、関係は長く続きます。
やめた前後で、何が変わったか
正直、変わりすぎて驚いています。
単価を上げてから残ったのは、信頼して任せてくれるお客さんだけでした。その結果、要件定義・デザイン・実装での手戻りがほぼなくなりました。見積もりは一発で通ることが多くなり、スケジュールもこちらで組めるようになった。仕事のストレスが、ほぼない状態になりました。
面白いのは、単価を上げたほうが揉めなくなったことです。普通は逆に思えますよね。高くなるほど要求もシビアになりそうなのに、実際は逆でした。理由はさっきの構造の話で、価格で選ぶ関係から「この人に頼みたい」で選ぶ関係に変わったからだと思います。認識を合わせる土台が、最初からある。
今はリピートが8割くらいです。選ばれている理由を面と向かって聞いたことはないですが、返信の早さ、曜日や時間にこだわらず動くこと、「これをやっておくと相手は助かるだろうな」の先回り。続けているのはその程度で、特別なことはしていません。
まとめ
単価を上げるためにやめたのは、この2つです。
- 低単価で受けること:価格を下げると、合わない仕事のほうが寄ってくる。値下げではなく、要件の調整で金額に中身を合わせる
- 言いなりになること:要望の裏の目的を確認し、提案や代替案を返す。その会話ができる関係のほうが長く続く
発注する側の方に一つだけお伝えするなら、制作者の見積もりが「高い」と感じたとき、値切るより先に「この金額の根拠は何ですか」と聞いてみてください。そこできちんと説明できる相手なら、たぶん任せて大丈夫です。
納品して終わりではありません。サイト公開後も相談できる制作者をお探しの方は、まずはお話をお聞かせください。