AIで何でも作れる時代に、わざわざ会いに行く理由
AIで、Webサイトはかなりのところまで作れるようになりました。私も毎日使っています。
それでも、少しでも直接会えそうな話が出てきたら、基本どこへでも行きます。これまでで一番遠かったのは鳥取でした。がっつり打ち合わせをしたわけではありません。事務所にお邪魔して、30分ほど話して帰ってきただけです。
効率で考えたら、ほぼ無駄な時間だと思います。ただ、その30分でしか手に入らないものがあります。
画面の中の相手は、いつもきれいな状態でいる
オンラインのミーティングだと、相手はずっと整った状態のままです。背筋が伸びていて、言葉も選ばれている。こちらもそうです。
ところが、同じ人と事務所で30分話すと、だいぶ砕けてきます。話が雑談に脱線し、途中で社内の人に声をかけ、画面の中では一度も見せていなかった笑い方をする。
私が見ているのは、その空気のほうです。事務所がどんな様子か。いつも打ち合わせをしている担当の方が、社内の人とどんなテンションで話しているか。会社としてどのくらい砕けた場所なのか。画面越しには、このあたりが入ってきません。
要件定義もデザインも、その理解の上に乗せるものだと思っています。同じ見た目でも、会社を知らないまま作ったサイトと、その場の空気を30分だけでも吸ってから作ったサイトでは、中に入れる言葉も、どこにどんな導線を置くかも変わってきます。少なくとも私の場合は、変わると感じています。
AIが最初に消したのは、私が入ってきた場所だった
AIの影響は、依頼の中身に出ました。単純な静的実装の相談が、来なくなりました。デザインどおりにコーディングするだけ、という種類の仕事です。
私が初めてお金をもらったのが、まさにそれでした。2020年6月、ココナラで受注したフィットネスジムのサイトリニューアル。デザインは支給で、WordPressで実装して公開するところまで。5ページで4万円。テーマをどう作ればいいのか分からず、早朝から深夜までやっていました。
その入口が、いま塞がりつつあります。自分が通ってきた道です。複雑な気持ちはあります。
一方で自分の作業はというと、楽になった面としんどくなった面が半々です。苦手だったことまで一人でこなせるようになった結果、全部を自分で抱えることになって、かえって時間が足りない。効率化の道具を手に入れて忙しくなりました。
ただ、AIが安くしたのは「作る」の部分だけです。相手を理解して、何を作るべきか決めるところは、まだ安くなっていないと感じています。
もともと私は、自分から声をかけられない側だった
こう書くと人と会うのが得意な人間に見えそうですが、逆です。
Webの前は、スポーツ用品店に5年いました。売り場に、明らかに迷っているお客さんがいる。それでも声をかけられない。先輩によく「いけ!」と怒られていました。
そのあと電話営業に移ってからも、最初の4ヶ月は受注がゼロです。完全にお荷物でした。
いまも大人数の場は苦手です。ただ、1対1なら誰とでも話せる。会いに行くといっても、大勢を前にプレゼンするわけではなく、担当の方と向かい合って30分話すだけです。それくらいなら、なんとかなります。
得意だから行っているというより、これならできるから行っている。そのほうが実情に近い気がします。
発注する側へ
これからWeb制作を頼むなら、何が作れるかと同じくらい、自社をどれだけ知ろうとしてくれるかを見てもらえたらと思います。
ツールの差は、もう小さくなっていると感じます。制作会社も個人もAIを使う。差がつくのは、要件を決める前にどれだけこちらを知ろうとするか、そして公開したあとも関係が続くかどうか、というあたりだと思います。
分かりやすいサインが一つあります。最初の質問が「どんなサイトにしますか」なのか、「何に困っていますか」なのか。ここは、けっこう正直に出るものだと思います。
まとめ
- AIで「作る」の値段は下がった。単純な実装の依頼は実際に来なくなった
- 相手を理解して何を作るか決める部分は、まだ下がっていない
- 画面越しの相手はいつも整っている。砕けるのは、対面で30分話したあと
- 私は人と会うのが得意ではない。それでも、そこにしかないものがあるから行く
道具が進化するほど、最後に残るのは人と人の話になる。しばらくAIを使い込んでみて、今のところの実感はこれです。
納品して終わりではありません。サイト公開後も相談できる制作者をお探しの方は、まずはお話をお聞かせください。